【食欲の秋特集】日本全国の郷土料理を徹底解説!秋の味覚を楽しむ秘訣とレシピ集

恵みを味わう

秋は食材が豊富に揃い、四季の中でも特に食欲が増す季節です。

山海の幸が収穫を迎え、温かい料理が恋しくなるこの季節、全国各地では秋ならではの郷土料理が人々に親しまれています。日本各地には、その土地特有の気候や風土、そして歴史に根ざした料理が数多く存在し、秋の味覚を活かした美味しい伝統料理が受け継がれてきました。

今回は、秋の味覚を楽しむ方法から、各地域で親しまれている郷土料理とレシピについて詳しくご紹介します。

食欲の秋とは?

秋になると「食欲の秋」という言葉を耳にする方も多いのでないでしょうか。
なぜ「食欲の秋」という表現が広く使われるようになったのか、それはいくつかの自然や文化的な要素に基づいています。

  • 食材が豊富な季節
    秋は、様々な作物が収穫を迎える季節です。米、野菜、果物、魚など、多くの食材が旬を迎えます。
    収穫されたばかりの食材は栄養価も高く、風味も豊かです。これにより、自然と食欲が増進する時期とされています。
    例えば、秋刀魚や栗、サツマイモ、柿などは秋の代表的な味覚であり、季節感を楽しむ食事の機会が増えます。

  • 夏の暑さが終わり、食欲が回復する
    夏の暑さで食欲が落ちていた人々も、気温が涼しくなる秋になると自然と食欲が戻ります。夏バテの回復や涼しい気候による体調の改善が、食べ物を美味しく感じさせる大きな要因です。

  • エネルギーを蓄える本能
    秋は冬に向けての準備期間でもあります。人間の体は寒さに備えてエネルギーを蓄えるため、食欲が増すという自然な生理現象も関連しています。
    特に温かい料理やカロリーの高い食べ物が魅力的に感じるのは、体がエネルギーを必要としているためです。

  • 文化的・文学的背景
    「食欲の秋」という言葉が使われ始めたのは、昭和時代(1926年~1989年)以降とされており、文学や俳句の中でも古くから使われてきました。
    秋は実りの季節であることから、豊穣(ほうじょう)を祝う祭りや行事が行われ、食べ物を楽しむ文化が根付いています。さらに、日本では秋に行われる「収穫祭」や「新米の季節」など、伝統的に秋は食を楽しむ時期とされています。

食欲の秋とことわざ

日本には、食欲の秋の雰囲気や秋の実りを楽しむことわざはいくつかあります。
これらは秋の収穫と食の豊かさを感じさせるものであり、「食欲の秋」の背景にある自然や文化の恵みを表しています。

実るほど頭を垂れる稲穂かな

実り豊かな稲穂は、穂が重くなると自然に頭を垂れることから、成功したり豊かになったりするほど、謙虚であるべきだという教訓です。秋の収穫の象徴であり、謙虚さの大切さを表しています。
秋の実りの豊かさを象徴し、食べ物の恵みがたっぷりであることが感じられる表現です。

秋茄子は嫁に食わすな

秋茄子(なす)は美味しいので、嫁には食べさせたくないという言葉ですが、実際には嫁を大切に思い、冷たい秋茄子は体を冷やすから食べさせないという思いやりの意味が含まれています。
秋の食材がどれほど美味しいかを示しつつ、食べ物への配慮を表すことわざです。

腹八分目に医者いらず

どんなに美味しいものがあっても、腹八分目にしておけば健康を保て、病気にもならないという教訓です。
秋は美味しい食材が多く食欲が増す時期ですが、食べ過ぎず適度に楽しむことが健康に良いというメッセージが込められています。

天高く馬肥ゆる秋

中国唐代の詩人・杜審言(としんげん)が書いた詩にある一節からきたものです。
秋は空が高く澄み渡り、馬も食欲が増して肥えるような収穫の季節のことで、「 食欲の秋」という言葉の起源になったのではという説もあります。

秋の味覚を楽しむ方法

旬の食材を選ぶ

旬の食材は、自然のサイクルに従って育つため、その時期に最も栄養価が高くなります。自然の持つ味わいをそのまま楽しむことができ、価格も家計にも優しく、日常の料理にも取り入れやすいのが魅力です。
旬の食材を楽しむことは、季節の移り変わりを感じ、自然とのつながりを深め、豊かな食文化を味わう大切な要素です。

魚介類 : 秋刀魚、鮭、牡蠣など
野菜 : 里芋、サツマイモ、カボチャ、キノコ類(シイタケ、マツタケ、エノキなど)
果物 : 柿、梨、リンゴ、ブドウ

炊き込みご飯や鍋料理を楽しむ

秋はだんだん暑さが和らぎ、温かい料理が恋しくなる季節です。秋の味覚を活かした炊き込みご飯や鍋料理は、季節感を存分に味わう方法の一つです。

炊き込みご飯 : 松茸ご飯や栗ご飯など、香り高い食材を使ったご飯料理は、秋の食材をシンプルに楽しむ方法です。
鍋料理 : 石狩鍋や芋煮、ちゃんこ鍋など、野菜や魚介類をたっぷり入れた鍋は、家族や友人と一緒に楽しむのに最適です。

デザートで季節を感じる

秋のフルーツやサツマイモ、栗を使ったデザートも楽しみ方のひとつです。自宅で手作りしたり、カフェや専門店で限定スイーツを味わったりすることで、秋の甘味を堪能できます。

スイーツ : サツマイモのスイートポテト、栗を使ったモンブラン、柿や梨を使ったフルーツタルトなど。

秋の食材を使ったアウトドアクッキング

秋の行楽シーズンに合わせて、アウトドアで秋の味覚を楽しむこともおすすめです。バーベキューやキャンプで秋の食材を使った料理を作るのは楽しい方法です。

バーベキュー : 秋刀魚の塩焼きやキノコのホイル焼き、焼き栗などを外で楽しむと、より一層美味しく感じられます。

秋の郷土料理を味わう

地方の秋の郷土料理を楽しむことも、秋の味覚を堪能する良い方法です。旅行や地元のレストランで、各地の伝統的な料理を味わうことで、秋の豊かさを体験できます。

秋の食材を使ったレシピに挑戦する

普段あまり使わない食材や新しい調理法を試すことで、秋の味覚をより深く楽しむことができます。
例えば、松茸の土瓶蒸しや、栗の渋皮煮など、手間はかかるものの、秋の風味を存分に感じられるレシピに挑戦するのもよいでしょう。

ダッチオーブン料理 : ダッチオーブンでサツマイモやカボチャをじっくり焼くと、甘みが引き立ち、秋の味覚をより深く楽しめます。

秋の日本酒やワインと合わせる

秋の料理に合うお酒を楽しむこともおすすめです。秋は「ひやおろし※1」と呼ばれる日本酒の出荷時期で、熟成されたまろやかな味わいを持つ日本酒が楽しめます。特に、脂がのった秋の魚や、旬の野菜と相性が良いとされています。
また、秋の食材に合わせてボディのしっかりした赤ワインやフルーティーな白ワインを楽しむことも、秋の味覚をさらに引き立てます。

※1 「ひやおろし」とは、江戸時代の貯蔵方法と季節の移り変わりに関連しており、秋に品質が安定した日本酒を「冷や」(気温が下がった状態)で蔵から「下ろす」ことから、「ひやおろし」という名前が付いたとされています。

秋の味覚を使った日本各地の郷土料理

日本各地には、秋の味覚を使った郷土料理が豊富にあります。
郷土料理は、地域の気候や風土に合わせた秋の食材をふんだんに使った伝統料理が多く見られ、秋の味覚を楽しむだけでなく、各地の文化や風習にも触れることができます。
今回は、各地の特産物や旬の食材を活かした郷土料理のいくつか地方別にご紹介します。それぞれの地域に伝わる伝統的な食材の活かし方に触れることで、秋の豊かさをより一層感じられることでしょう。

北海道地方石狩鍋
(いしかりなべ)
秋の味覚 : 鮭、野菜(白菜、キノコ、ジャガイモ)
味噌ベースのスープに秋鮭と旬の野菜を入れた鍋料理です。北海道の冷涼な気候にぴったりの料理です。
東北地方はっと汁
(宮城県)
秋の味覚 : 野菜(大根、ニンジン)、小麦粉
小麦粉を練って作った「はっと」と呼ばれる団子を野菜とともに煮込んだ汁物です。秋の収穫野菜がふんだんに使われます。
関東地方深川めし
(東京都)
秋の味覚 : アサリ、シジミ
江戸時代からの漁師料理で、アサリやシジミなどを炊き込んだご飯です。東京湾で獲れる秋の海の幸を使います。
中部地方朴葉味噌(ほおばみそ)焼き
(岐阜県)
秋の味覚 : 山菜、キノコ、里芋
朴葉(ほおば)の葉に味噌と秋の食材を乗せて焼き上げる料理です。山の幸を味わえる郷土料理です。
近畿地方秋鯖寿司
(滋賀県)
秋の味覚 :
脂がのった秋鯖を使った押し寿司です。発酵食品としても知られ、滋賀の琵琶湖周辺でよく食べられます。
中国地方鮭の酒びたし
(島根県)
秋の味覚 :
鮭を寒風で乾燥させて、熟成させた料理です。日本酒と一緒に秋の夜長を楽しむ料理として知られています。
四国地方さつま汁
(愛媛県)
秋の味覚 : サツマイモ、魚
秋のサツマイモと魚を使った味噌仕立ての汁物です。さつま芋の甘みと魚の旨味が調和した郷土料理です。
九州地方鶏飯(けいはん)(鹿児島県)秋の味覚 : 鶏肉、シイタケ、柿
鶏のだしで炊いたご飯に、鶏肉やシイタケ、秋の味覚の柿などをのせ、鶏スープをかけていただく料理で、奄美大島の郷土料理です。
沖縄地方ラフテー秋の味覚 : 豚肉(秋は脂がのりやすい)
豚肉の三枚肉を泡盛や醤油で煮込んだ沖縄の郷土料理です。秋には豚肉の脂が美味しくなるため、よりコクのある味わいが楽しめます。

旬の食材を使った郷土料理レシピ

郷土料理は、地域の自然や歴史に根ざしており、季節の恵みを生かした伝統的な味わいを楽しむことができます。それぞれの地域の風土や文化を感じながら、ぜひ作ってみてください。

いもたき(愛媛県の郷土料理)

愛媛県で秋に行われる「いもたき会」が由来で、江戸時代中期に大洲藩主・加藤泰恒が領民のために行った観月会が起源とされています。里芋を中心に鶏肉やこんにゃくなどを加えて煮込む料理で、河原で大鍋を囲みながら楽しむ秋の風物詩です。

材料(4人分)

里芋:400g
鶏肉(もも肉):200g
・長ネギ:1本
シメジ:100g
人参:1/2本
醤油:大さじ3
みりん:大さじ2
酒:大さじ1
だし汁:800ml

いもたき

作り方

  1. 里芋は皮をむいて塩でもみ、水で洗い流して下ごしらえします。
  2. 鶏肉は一口大に切り、長ネギは斜め切り、シメジはほぐしておきます。
  3. 鍋にだし汁を入れ、鶏肉、里芋、人参を加えて煮ます。
  4. 里芋が柔らかくなったら、シメジと長ネギを加え、醤油、みりん、酒で味を調え、全体が煮えたら器に盛り付けて完成です。

サンマのすり身汁(岩手県の郷土料理)

岩手県三陸地方のサンマ漁が盛んな地域で生まれた郷土料理で、新鮮なサンマをすり身にして団子状にし汁物にしたものです。サンマの旨味がスープに溶け込み、しょうがや味噌の風味が加わることで、寒い季節にぴったりの温かい一品です。また、サンマの脂の乗った季節に作ることで、魚の栄養と旨味をしっかりと摂ることができる料理です。

材料(4人分)

秋刀魚(3枚おろし):2尾分
長ネギ:1本
ショウガ:1片
味噌:大さじ1
酒:大さじ1
だし汁:1L
醤油:大さじ1
みりん:大さじ1
大根:150g
人参:1/2本
シメジ:100g
青ネギ(飾り用):適量

サンマのすり身汁

作り方

  1. 秋刀魚の身をすり鉢ですり、長ネギとショウガをみじん切りにして混ぜます。味噌と酒を加えてよく混ぜ、つみれのタネを作ります。
  2. 大根と人参は薄切り、シメジはほぐしておきます。
  3. 鍋にだし汁を沸かし、大根、人参、シメジを加えて煮ます。
  4. つみれをスプーンで丸め、鍋に落とし入れて煮ます。
  5. 醤油とみりんを加えて味を調え、最後に青ネギを散らして完成です。

栗きんとん(岐阜県の郷土料理)

栗きんとんは、岐阜県中津川市や恵那市を中心とした地域の秋の名物で、地元で収穫される栗を使った伝統的なお菓子です。秋に採れる栗を使ったシンプルな和菓子で、各地で親しまれていますが、特に岐阜県のものが有名です。

材料(4人分)

栗:300g
砂糖:100g
塩:少々

栗きんとん

作り方

  1. 栗を茹でて皮をむき、実を取り出します。
  2. 取り出した栗の実を鍋に入れ、水を加えて弱火で柔らかくなるまで煮ます。
  3. 柔らかくなった栗を裏ごしし、鍋に戻し、砂糖と塩を加えて中火で練り、栗がしっかりとまとまるようにします。
  4. 火を止め、少し冷ましたら、手で適量を取り、楕円形や丸形に成形し、しっかり冷めたら完成です。

いきなり団子(熊本県の郷土料理)

「いきなり団子」は、熊本県の郷土料理で、サツマイモと小豆餡(あん)を生地で包み、蒸したもので、おやつや軽食として親しまれています。急にお客さんが来ても「いきなり(急に)」作れることから名前が付いたとされています。生地に白玉粉を入れることで、もちもち感とふんわり感が楽しめる団子になります。

材料(4人分)

サツマイモ:1本(中サイズ)

小豆餡(こしあんまたは粒あん):100g

小麦粉:50g

白玉粉:50g

水:80ml

塩:少々

いきなり団子

作り方

  1. サツマイモを1cm厚さの輪切りにし、水にさらしてアクを抜きます。
  2. ボウルに小麦粉と白玉粉、塩を加え軽く混ぜます。
  3. 水を少しずつ加えながら、ダマにならないようにしっかり混ぜます。耳たぶくらいの柔らかさになるまで、よく手でこね、20分間ほど休ませます。
  4. さつまいもの上に小豆餡を25gづつのせます。
  5. 生地を4等分して丸め、手のひらサイズに平たく伸ばします。中央に小豆餡が下になるよう小豆餡とサツマイモをのせ、生地を少し引っぱりながらしっかりと閉じます。
  6. 蒸し器の下段にたっぷり水を入れ、蒸気が上がったら、閉じ口を下にしてオーブン用の紙にのせ、強火で約25分間蒸し完成です。

まとめ

秋は、自然が豊かな実りをもたらし、私たちに季節ごとの恵みを味わう機会を与えてくれます。日本各地の郷土料理や旬の食材を楽しむことで、秋の深まりとともに心も体も満たされるでしょう。
四季折々の食文化に触れ、秋の味覚を存分に堪能するひとときをお過ごしください。
これからの季節、ぜひ家族や友人と一緒に秋ならではの料理を楽しみ、豊かな食の時間を大切にしてみてはいかがでしょうか。

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