栗ご飯や、栗まんじゅうなど秋を代表する味覚である栗。
歴史は古く縄文時代から栗の栽培がおこなわれていたと考えられています。栗には大きく「アメリカ栗」、「ヨーロッパ栗」、「中国栗」、「日本栗」の4種類があります。実は私たちが食べているのは栗の実ではなく「種」なんです。栗は「鬼皮(おにかわ)」と呼ばれる硬い皮に包まれています。実はあれこそが栗の「果肉」の部分です。
栗の旬と産地
栗は8月頃から収穫が始まり9月から10月にかけてピークを迎えます。そのまま11月頃まで出回る品種もあります。国内の主な産地は茨城県で国内取扱量の約93%を占めており、次に熊本、栃木が主な産地として知られています。
日本栗の種類
利平栗
利平栗は日本を代表する品種で別名「栗の王様」とも呼ばれており、日本産の栗と天津甘栗に用いられる中国栗とを掛け合わせて生み出された品種です。
利平栗の特徴はふっくらとした粒と丸い形、果頂部に産毛が沢山見られる事、そして何よりも色が濃く、深煎りのコーヒー豆のような色をしています。
鬼皮がとても固く剥きにくいのですが、渋皮は他の品種と比較すると剥きやすいのも特徴です。大粒ですが甘みと香りが強く濃厚な品種になっています。
丹波栗
昔の丹波国(現在の京都府中部、兵庫県東辺の一部、大阪府北辺の一部)から産出された栗の総称で栗の品種ではなく、丹波地方で採れる栗をいいます。
丹波栗はシーズン中最も早く収穫時期を迎え市場に出回る代表的な早生栗です。栗全体で見ると筑波に次いで多く作られている品種で、全体の17%を占めています。
やや大粒で、表面の艶が鈍く光る感じです。裂果が多いのも特徴です。
果実に糖分が蓄積され粘着性があり、味も香りも良いことも丹波栗の特徴として挙げられます。
筑波栗
筑波栗は一気にたくさんの量を生産することができ、悪天候や病気にも強いことから現在国内で最も広く栽培されている品種です。筑波の大きさは1粒28g前後と栗の中では大きめのサイズ。
栗らしい形をしていますが、先端がやや尖っていて、その周囲が粉っぽく白くなっているのも筑波栗の特徴です。殻を割ると栗の香りが強く広がり食べると程よい甘みのある栗です。
ぽろたん
果実が大きく食味が優れているのとともに加熱すると渋皮がつるっと綺麗に剥けるという画期的な特徴を持った品種です。
渋皮がポロンと剥けることと、広く愛されて欲しいとの願いを込めて「ぽろたん」と命名されました。
果実は和栗の中でも大きめで一粒が30g前後あり、形はやや腰高で「国見」によく似ています。
表皮は赤みを帯びた茶色で、座は小さいです。果肉は黄色く、粉質で甘味があります。ただ、粉質が強いため煮崩れしやすいという面もあります。
柴栗
別名山栗(ヤマグリ)とも呼ばれている柴栗は、古くは縄文時代から食用とされてきた山に自生している栗で、現在栽培されている様々な品種の原種となっています。
現在でもちょっとした山に登ると、雑木林に見ることができます。
その果実は他の栗と比較するととても小さく半分ほどの大きさしかありません。そのため皮をむくのが一苦労です。
ですが実が小さい分味はぎゅっと凝縮していてとても美味しく、まさに滋味深い味と言えます。
銀寄栗
銀寄栗は江戸時代後期、天明の大飢饉の時代にこの栗を売り歩いたところ、高値で飛ぶように売れ多くの銀札(当時の貨幣)を集めたことからその名前が付けられました。
1粒25g程と大きく他の栗に比べどっしりとした扁平な形をしています。
表面は艶があり、底の部分との境界が太くくっきりしている傾向があります。
果肉は粘質で加熱するとホクホクになります。
栗らしい香りと甘みの強さからおかしなどに向いています。
岸根栗
岸根栗は平家の落ち武者が源平の戦い後に逃れた場所で接ぎ木をして栽培を始めたことがルーツと言われている品種です。また、他に類を見ない優良品種として国の推奨品種に指定され広く知られるようになりました。
「筑波栗」や「石鎚栗」など岸根栗を祖先とする栗も多く、和栗の元祖とも言えます。
岸根栗の特徴は何といってもその大きさです。1個30~40gもあり、大粒で知られる丹波栗と並べても明らかに大きいです。
大粒でつやのある実は甘みが多く貯蔵性がり料理に向いています。
美玖里
2010年に品種登録されたやや晩生で食味に優れる栗です。
果肉が黄色く、風味がよくて食味もほくほくと美味しい栗ですが、まだ生産量がわずかで付加価値の高い品種となっています。
果実は平均果重28gほどと大きく、果形粒ぞろいが良いです。果肉は「石鎚」や「筑波」等に比べ黄色く、肉質は粉質で加熱調理するとほくほくした食感になります。
また、栗らしい香りが強く甘味も多いのが特徴となっています。
石鎚栗
石鎚は赤みがかった赤茶色の色合いの品種となっています。
「石鎚」の果実は扁円で粒はやや大きく平均1果重20~25gボリューミーさも魅力の一つです。また、ほかの品種と比べるとクリタマバチなどの害虫に強く、抜きんでた保存性も特徴です。
果肉は淡い黄白色でやや粉質ですが煮崩れしにくいことと、貯蔵性も高いことから加工用としても適しています。また、鬼皮、渋皮とも厚めで剥離しにくいですが、渋皮はあまり果肉内に湾入せず、していても浅いことからナイフ等で削ぎ取りやすく、むき栗への加工がしやすい品種となっています。
人丸栗
風味、味ともにとても良い品種なのですが現在では生産者が少なく生産量、流通数ともにとても少ない希少品種であり「幻の栗」とも呼ばれ高級品として親しまれています。
人丸の果実の大きさは中位で「丹沢」と同程度となっており、現在の主要品種の中ではやや小さめです。形に大きな特徴はみられませんが、果皮が赤褐色で光沢があるのが特徴です。また、果肉は黄色味があり、粉質で豊かな香りと甘味の強さが特徴となっています。
栗の主な栄養
- ビタミンB1
- カリウム
- タンニン
- ビタミンC
- 食物繊維
ビタミンB1
ビタミンB1は糖質やアミノ酸の代謝をサポートする栄養素で、別名チアミンと呼ばれる水溶性のビタミンです。
糖質をもやしてエネルギーに変える働きがあるほか、疲労回復や神経・筋肉の機能を正常に保つ働きがあります。糖質を多く摂る人や、よく体を動かす人は積極的に摂取したい栄養ですね。
カリウム
ナトリウムや老廃物や水分を排出するはたらきがあります。
高血圧予防などに効果があります。むくみ対策の栄養素として人気があり、塩分をとりすぎたときや、立ち仕事による足のむくみなどになやんでいる方におすすめです。
また、カリウムは血圧を正常にたもつ働きを持っています。
カリウムをしっかりとることで体内の余分な塩分を外に追い出し、高血圧を予防する手助けになります。
タンニン
ポリフェノールの一種で渋皮部分には多く含まれています。
タンニンには抗酸化作用があり血管が老化によってかたくなる動脈硬化対策にも注目されている成分です。老化の防止やガンの予防に役立つため、健康維持のために食事にとりいれていきたい栄養素です。
また、肌につけると毛穴をひきしめる「収れん作用」も期待できるため、さまざまな化粧品にも配合されています。
ビタミンC
栗は意外にビタミンCが豊富です。
栗を15粒程度食べると1日に必要なビタミンCが摂取できます。
ビタミンCは抗酸化作用の他にコラーゲンの生成、鉄の吸収をサポートする働きがあります。
そのため美容効果や免疫力の向上が期待できます。また、ビタミンCはストレスによる抑うつや不安などの⼼理的な症状の予防に役⽴つことが知られています。
ビタミンCは加熱に弱い栄養素ですが、栗に含まれているビタミンCはデンプン質に包まれているため、加熱しても壊れにくくなっています。
食物繊維
食物繊維は消化酵素では分解されず、消化や吸収されません。
食物繊維には水に溶ける水溶性食物繊維と、そのまま消化吸収されない不要性食物繊維がありますが、栗に含まれているのは不溶性食物繊維です。
消化吸収されず、腸内にある老廃物の排出をサポートするため腸内の老廃物のお掃除や便秘解消におすすめです。
また、胃腸にとどまることから、血糖値の急激な上昇を抑えることが出来ます。
美味しい栗の見分け方
・皮に光沢・ツヤがあるか
栗の大部分である茶色い「鬼皮」に光沢があるものがおすすめです。
・表面がしなびていないか
表面がシワのようになっていないツルツルしているものを選びましょう。
・ずっしりと重みがあるか
栗は時間がたつと水分が失われていくので、水分を含んでいて重みが感じられるものが新鮮な栗と言われています。
・虫食い穴に要注意
皮に傷が付いてるものや黒っぽく変色していているもの、小さな穴が空いているものは虫に食べられている可能性が高いので避けましょう。
栗を長期間保存する方法
栗は傷みやすい果物なのでなるべく購入したその日のうちに食べるのが良いです。
しかし食べきれずに保存したい場合は「皮のまま茹でて冷凍する」のが長期間保存できておすすめです。
保存方法
- 栗を水に1時間つける
- 弱火で50分茹でる(アクは取り除いてください)
- ざるに移して粗熱をとり、水気を拭く
- 冷凍用保存袋に入れて冷凍庫で保存する
解凍する際は常温で30分解凍してください。
皮のまま茹でて冷凍がおすすめな理由
・味・食味が損なわれない
栗は冷凍することで味や食味が損なわれにくい食べ物です。
・長期間保存が可能に
およそ3か月ほど保存できると言われています。
・皮が剥きやすくなる
解凍することで鬼皮がやわらかくなり、渋皮との間に隙間ができるので結果として皮無化が簡単になります。
栗の剥き方
- お尻の部分に包丁のあご部分(刃元の角)で切り込みを入れる
- 切れ目に包丁を入れ、栗の頭の方向にゆっくりと引っ張る